No.88 幸せを呼ぶ青いハチ

- 夏の終わりの美しい寄生バチ -

写真1 キツネノマゴの蜜を吸うルリモンハナバチ(なるかわの森)
写真1 キツネノマゴの蜜を吸うルリモンハナバチ(なるかわの森)

 今年も、なるかわの森に青いハチがあらわれました。開けた草地で忙しそうに飛び回り、小さな花の蜜を吸っています。名前はルリモンハナバチ*1、いつの頃からか、出会った人に幸せを呼ぶハチと言われてます*2 [1]

写真2 アキノタムラソウの蜜を吸うルリモンハナバチ(ほしだの森の近辺)
写真2 アキノタムラソウの蜜を吸うルリモンハナバチ(ほしだの森の近辺)

 青いハチは、ほしだの森の近くにもあらわれます。黒い体に青い毛(羽状毛:写真2左上円内)の紋様が美しい。ルリモンハナバチは花の蜜や花粉を食べるハナバチのなかま、でも、別の種類のハナバチ(スジボソフトハナバチ)の巣に卵を産み付けて、育ててもらう寄生バチ。そう聞くと、なんだか怖そうな顔に見えてきますが、寄生バチは珍しくありません。ハチの種類の中の5割以上の種が、昆虫やクモの卵などに寄生しています[2]。以前紹介した、チャイロスズメバチは、他のスズメバチに寄生するハチでした。

写真3 アキノタムラソウの蜜を吸うスジボソフトハナバチ(ほしだの森の近辺)
写真3 アキノタムラソウの蜜を吸うスジボソフトハナバチ(ほしだの森の近辺)

  ルリモンハナバチがあらわれる所では、寄生されるスジボソフトハナバチ*3もよく見かけます。とても長い舌で花の蜜を吸います。蜜が花の奥にあるツリフネソウが得意そうです。

写真4 ムクゲに集まるルリモンハナバチとスジボソフトハナバチ(むろいけの森の近辺)
写真4 ムクゲに集まるルリモンハナバチとスジボソフトハナバチ(むろいけの森の近辺)

 寄生する側(ルリモンハナバチ)と寄生される側(スジボソハナバチ)が同じ花に集まっているようです。お互い気にならないのかな? いつも、戦っているわけではないのですね。

写真5 地面近くをゆっくり飛ぶルリモンハナバチ(なるかわの森)
写真5 地面近くをゆっくり飛ぶルリモンハナバチ(なるかわの森)

 ハイキング道沿いで、ルリモンハナバチが地面の近くを何かを探すようにゆっくりと飛んでいました。ここには花は見当たりません。スジボソハナバチの巣を探しているのかな。

写真6 キバナコスモスの蜜を吸うルリモンハナバチ(くろんどの森の近辺)
写真6 キバナコスモスの蜜を吸うルリモンハナバチ(くろんどの森の近辺)

 8月の下旬から10月の始めにかけて、ルリモンハナバチは色んな花にやってきます。生駒山地でも場所を選べば、ときどき出会います。やはり出会うと幸せな気持ちになります。ハチは怖いイメージが強く、上の動画のように、すばやく動くいて観察も難しいのですが*4、美しい青いハチをきっかけに、いろんなハチの世界[3][4]に興味をもってもらえたらうれしいです。

写真8 オミナエシの蜜を吸うオオセイボウ(ほしだの森の近辺)
写真8 オミナエシの蜜を吸うオオセイボウ(ほしだの森の近辺)

 せっかくなので、夏の終わりの青いハチをもう一種。ほしだの森の近くで植栽されたオミナエシで蜜を吸ってました。名前はオオセイボウ*5、メタリックな青いからだが美しい。こちらも、スズバチやトックリバチの巣に卵を産み付ける寄生バチです。

(ます 2022/09/7)

ルリモンハナバチもオオセイボウも大人しいハチですが、危害を加えようとしたり、手で触ったりすると、刺されたり、分泌物で腫れたりすることがあります。近づいて観察する場合は、注意してください。

【より深く知りたい方へ】

*1 ルリモンハナバチ(瑠璃紋花蜂)

 ミツバチ科ルリモンハナバチ属。体長はメスが11~14mm、オスが10~13mm[5]。ニホンミツバチの働きバチと同じくらいの大きさです。

 ルリモンハナバチは、同じハナバチの仲間の、スジボソフトハナバチの巣に卵を産み付けて、育ててもらいます。カッコウがウグイスの巣に卵を産み付けて、ウグイスに育ててもらう托卵(たくらん)と同じです。ただ、ルリモンハナバチは、卵を産み付ける際に、巣の中にいるスジボソフトハナバチの幼虫や卵をかみ殺してしまうらしいです[6]

 

*2  幸せを呼ぶ青いハチの由来

 誰がいつからそう呼んだのかは、定かではありませんが、2004年に出版された絵本 ”ブルー・ビー”[1]の説明には、幸せを呼ぶ青いハチが使われています。その美しさと珍しさから、出会った人に幸せを呼ぶハチと言われているのではないかと想像します。

 

*3 スジボソフトハナバチ

 ミツバチ科フトハナバチ属、スジボソコシブトハナバチとも言われます。体長はメスが13~16mm、オスが12~13mmで[5]、ニホンミツバチの働きバチやルリモンハナバチより、ほんの少し大きい。図鑑[3][5]には、それぞれ、8月から9月、5月の下旬から10月にあらわれると書いてありますが、生駒山地での出現時期はよくわかりません。大きなアゴを使って葉をはさんで休むそうです[3]

 

*4 ルリモンハナバチの観察

 ルリモンハナバチは体長10~15mmとニホンミツバチの働きバチと同じくらいの大きさです。黒字に青い紋様は草むらでも目立ちますが、野生のキツネマゴやアキノタムラソウ、植栽のオミナエシのような小さい花では、動画のように、よく飛び回って、なかなか見ずらいです。植栽のキバナコスモスやムクゲのように大きな花の方が、見やすいです。府民の森やその近辺で、植栽の花を見かけた時は、のぞいてみると見つかるかもしれません。

 

*5 オオセイボウ

 セイボウ科。体長は12~20mmで、6月~10月にあらわれると書かれていますが[3]、私には8月~10月のイメージがあり、ルリモンハナバチよりは出会う機会が少ないように思います。メタリックな青色は、見る角度によって、緑色にも見えます。これはタマムシの翅(はね)と同じで、構造色によるものです。

【参考文献】

[1] 葉山 祥鼎、ブルー・ビー、作品社(2004/7)

[2] バイオオーム、卵を生むための器官が武器になったハチのお話(2021/8) https://biome.co.jp/biome_blog_179/

[3] 松本 吏樹郎、ずかんハチ、技術評論社(2014/5)

[4] 前藤 薫 編、寄生バチと狩りバチの不思議な世界、一色出版(2020/6)

[5] 多田内 修・村井 竜起 編、日本産ハナバチ図鑑、文一総合出版(2014/9)

[6] 三田 敏治、有剣類の採餌様式の多様性と系統、昆虫と自然 p.12 52(11)  2017

 

リンク

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